お問い合わせ
リンク
サイトマップ
交通アクセス
トップページへ
当病院について
診察のご案内
入院お見舞いのご案内
医療機関の方へ
リクルート
▼診療科目
├ 脳神経内科
├ 脳神経外科
├ 脊椎脊髄外科
├ 内科
├ 循環器科
├ 消化器外科
├ 放射線科
├ 精神神経科
└ 小児神経科
トップ
>
当病院について
>
法律と医療
> 保険医の法的責任
保険医の法的責任
医事紛争における保険医の法的責任について
脳神経センター大田記念病院 大田浩右) 脳神経外科速報 第10巻第7号より(2000年7月10日発行) いやしくも人の生命および健康を管理する業務(医療)に従事する者は、通常人に比べて特別の注意義務を負わされている。 この注意・義務を怠って患者の身体生命に危害を与えた場合は、加害者として刑法・民法で厳しく責任を追及される。 もしくは刑法で罰せられることがある。 ①刑法第204条に傷害の罪があり、人の身体を「傷害したものは……」とある。ここでいう傷害とは「他人の身体に対する暴行に」より、その生活機能に傷害を与えること」とされ、その暴行とは「人の身体に対する不法な攻撃方法の一切を云う」とされており、不法であればすべてが暴行となり、この不法をもって傷害を与えれば傷害罪が成立することになる。 例えば、手術の必要のない患者を手術したような場合が考えられる。 最近では、横浜市大病院の患者取り違えの件は、刑法により関係者のうち5名が起訴・書類送検されている。 ②刑法第211条には業務上過失致死傷の罪があり、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷した場合は……」とあるが、医療はこれにいう業務に該当し、業務上の注意義務(一定の業務に従事する者は、通常に比べ、特別の注意義務を有する)を怠ったことによる傷害致死に至った場合は医師等がその責任を追求される。 もしくは民法でその責任を追及される(今は善意の使用者責任で守られているだけ) ③民法第709条では医療機関で発生した医事紛争について不法行為(故意または過失によりて他人の権利を侵害したる者はこれにより生じた損害を賠償する責に任ず)の法令があり、他人の権利を侵害した者として医師等が損害を賠償する責に任じられ、損害賠償請求をされる。 したがって、病院に勤務している医師が医療過誤を行った場合は、過誤を行った医師が損害賠償の責に任じられ、損害賠償を行うこととなる。 ④民法第715条(使用者責任)では、病院の勤務医等が患者に損害を加えた場合、医療のために他人を使用する者は勤務医等が医療を行うことにより第三者に損害を加えた場合は使用者が損害を賠償する責に任じられるとされている。 ただしこの場合も、使用者が勤務医等に医療の監督につき相当の注意をなしたるとき、または相当の注意をしたのに損害が生じることとなったときはこの限りではないとされている。 ⑤前項と同様、使用者に代わって医療を監督する者(院長等)も責任を負わされる。 ⑥しかし、前2項で責任を果たした者は、勤務医等に対し求償権を行使できる。 このように、医療現場における事故については使用者責任が前面に出すぎており、勤務医自身は罰せられることもなく、損害賠償責任もないと思い込んでいる医師があまりにも多い。 しかし法的には、使用者は負担した補償、賠償金を勤務医に請求する「求償権」が認められており、あくまでも医師免許を与えられた勤務医自身の責任が最も大きいことを認識すべきである。 以上、医師に限らず医療従事者すべてがこれら紛争にかかわる可能性があり、もし不幸にしてこのような紛争に関与した場合、民事については使用者による救済が受けられる場合も考えられるが、刑事についてはあくまでも医療従事者本人が賠償責任を原則的に追及され、また刑事責任を追求されるもので、本人自身が責任を負うことになる。
原則として診療拒否はできない
脳神経センター大田記念病院 大田浩右) 脳神経外科速報 第10巻第7号より(2000年7月10日発行) 医師法第19条において「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とされている。このことを医師の応召義務という。 ここでなにが正当な事由であるかは、「社会通念より健全と認められる道徳的な判断」によるべきと厚生省は通知している。 一般的に正当な事由とされない例には、以下のものが挙げられる。 ① 空床がないこと ② 患者の貧困なること ③ 診療報酬が不払いであること ④ 診療時間の制限 ⑤ 職域病院、職場診療所であること ⑥ 天候不良等の場合 ⑦ 医師の自己標榜診療科以外 上記の理由を越えるような相当の事由がなければ、医師の応召義務違反を問われる。 唯一診療拒否できる理由は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られるのであって、単に疲労程度をもってこれを拒絶することは第19条の義務違反を構成する。 この応召義務違反についてはただちに罰則の適用はないが、医師法第7条で「医師としての品位を損するような行為があったとき」として、義務違反が反復するような場合は同条の規定により医師免許の取り消しまたは停止が命じられる場合もあるとされている。
手抜き診療は債務不履行となる
脳神経センター大田記念病院 大田浩右) 脳神経外科速報 第10巻第7号より(2000年7月10日発行) 民法第415条で債務不履行による損害賠償請求を求められることがある。 本来患者の求めに応じ診療を行うことは患者と診療契約をして診療を行うこととされており、この契約に基づく診療についてはその医療機関のもっている医療水準(医療機関の性格、その所在する地域、医療環境の特性等、諸般の事情を考慮し、医師の知見が類似医療機関にも普及しており、客観的に当該医療機関が知見を有すると期待することが相当と認められる程度の医療水準)に至らない診療により患者に損害を与えた場合、患者に対し診療が十分に果たせなかったことにより、患者から債務不履行を追及されることもある。
医師免許の取消、業務停止について
脳神経センター大田記念病院 大田浩右) 脳神経外科速報 第10巻第7号より(2000年7月10日発行) 医師法第4条の免許の相対的欠格事由として、精神病者または麻薬、大麻、あへん等の中毒者および罰金以上の刑に処せられた者が該当するのは当然のこととして周知されている。 最近の特色は、公的病院勤務者の医事に関する犯罪または不正の行為が増えてきていることである。 医師法第7条の免許の取り消し、業務停止および再免許では、厚生大臣はあらかじめ医療審議会の意見を聞いたうえで、医師が第4条に該当し、また医師としての品位を損なうような行為のあったときにはその免許を取り消すこと、または期間を定めて医療の停止を命ずることができるとされている。
そのほか
●インフォームドコンセントは憲法13条に基づく医師の責任と義務である(脳神経センター大田記念病院 大田浩右) 脳神経外科速報 第10巻第9号より(2000年9月10日発行) 憲法13条 個人の尊重、生命自由、幸福追求の権利の尊重 『すべての国民は、公共の福祉に反しない限り個人としての生命、自由、及び幸福の追求に対する権利を最大尊重する。即ち、基本的に人件を享有する。』 最近の医療紛争の内容を見たとき、明らかな医療過誤での敗訴ではなく、説明義務違反での敗訴が目立つようになったとの印象をもつのは筆者だけではないだろう。 保険医の皆さんは、インフォームドコンセントについて、言葉ではわかっていてもその法的な背景や根拠について意外とご存じないようである。 特に若い保険医には、確たる法的責任と義務をもってインフォームドコンセントを行っている方が少ないのが現状であろう。 説明義務違反とは、憲法13条に違反し、個人の生命、自由の権利の侵害にほかならないのである。 ●患者の自由権、自己決定権は医師の裁量権に優先する - (脳神経センター大田記念病院 大田浩右) 脳神経外科速報 第10巻第9号より(2000年9月10日発行) 衝撃的な「エホバの証人」判決:医療側の敗訴 人はいずれは死すべきものであり、その死に至るまでの生き様は自ら決定できるといわなければならない。 東京高等裁判所は平成10年2月9日、患者の輸血承諾なしに救命を優先し輸血を行った医師の主張に対し、救命ないし延命が至上命題ではなく、患者の自己決定権が優先されるべきであると判断し、医療側の弁明を退けた。 このエホバ側の勝訴は、医療界に大きな衝撃をもたらした。 医療側が輸血の必要性について説明すれば患者は手術を拒否するであろうと考えた結果として、相対的無輸血についての十分な説明がなされなかった点について、判決内容はこれを説明義務違反と断じたこと、さらに医師の裁量権より患者の自己決定権が勝ることを明確に述べている点にわれわれ保険医は特に注目すべきである。 ● 転医の自由 - (脳神経センター大田記念病院 大田浩右) 脳神経外科速報 第10巻第9号より(2000年9月10日発行) 患者さんの自由権、自己決定権は、診療契約において最大の権利として認められている。 現在かかっている医療機関の診療に不安や不満、疑義を持ったとき、転医の希望が出てくる。この時の担当医の気持ちは複雑であることが多い。 憲法13条により転医の自由は当然の権利として認められているが、さらに保険医療機関および保険医療養担当規則第16条に、「保険医は患者の疾病または負傷が自己の専門外にわたるものであるとき、またはその診療について疑義があるときは、他の医療機関へ転医させ、適切な措置を講じなければならない」と明記されている。 したがって、正当な理由なく患者の転医の自由を束縛、妨害し、結果として治療予後が不良の場合、担当医は苦しい立場に立たされることは十分に予見し得ることである。 くれぐれも転医希望への対処を誤らないようにご用心いただきたい。